ビーガンFAQ - よくある質問と返答集

―Frequently Asked Questions― (よくある質問)



by Kei Singleton
First published: 10. Oct. 2017;
Last updated: 5. Aug. 2020

以下のリンク先からpdf版がダウンロード可能である。

※pdf版の内容の方が詳細かつ最新である。現在ウェブ版(本ページ)の更新は行っておらず,最終的にはウェブ版は廃止する予定であるため,pdf版の方を推奨する。


ビーガニズム=
×完全菜食主義
×肉嫌い
×動物愛護
×信仰
〇反差別運動


―Index―


1.でも植物も..
 ┗わからないだけで植物にも知覚があるかもしれないのでは?
 ┗植物にも意識があるという記事(の見出しだけ)を読んだけど?
 ┗動物が本当に苦しむかわからないのでは?
 ┗意識の定義によるのでは?
 ┗苦痛が問題なら、苦痛なく殺せばよいということになるのでは?
2.でもライオンも...
3.菜食は健康に悪いのでは?
 ┗菜食で命を落とした子供がいると聞いたけど?
 ┗ビタミンB12は?/サプリメントが必要な食事は不完全ではないか?
 ┗タンパク質は?
4.価値観を押し付けないでくれないか?/個人で勝手にやってくれないか?
5.食べるものに困ってる人のことを考えないのか?
6.全員がビーガンになったら持続不能では?
7.動物を食べるのは自然なこと/昔から食べてきたからいいのでは?
 ┗人間も自然の一部だから、その行いをやめさせようとするのは間違いでは?
 ┗肉食によって人類の脳の発達が促進されたのだから、肉を食べるべきなのでは?
8.ヒトラーも菜食主義者だったらしいけど?
9.作物の栽培でも動物が犠牲になるのでは?
10.ビーガンが増えたら畜産関係者が職を失うのでは?
 ┗ビーガンは畜産関係者を差別してるのでは?
11.個人の自由では?
12.ヒト以外の動物は道徳的に配慮する必要はないのでは?/種が違うのだから当然では?
 ┗ヒト以外の動物に権利を与えるという発想には無理があるのでは?
 ┗ヒト以外の動物は道徳や権利なんて認識しないから自己満足では?
13.ビーガニズムは宗教じゃないか?
14.感謝して食べているからいいでしょう?
15.犠牲を出したくないなら山にこもってればいいんじゃないか?
 ┗ビーガンだって動物産業によって成り立つ社会に生かされてるのだから、矛盾しているのでは?
16.ビーガンって草ばっか食べてるんでしょ?
 ┗わざわざ肉や乳製品の代替品を食べるってことは、本当はやっぱ動物製品が食べたいんでしょ?
 ┗ビーガンは母乳も反対なんでしょ?
17.我々が食べなければ、そもそも家畜は存在/存続することができないのでは?
 ┗家畜の絶滅は生物多様性の保護の理念に反するのでは?
 ┗家畜の種の保存の本能を無視するのか?
18.売られている肉はすでに殺された動物だから、食べても食べなくても同じでは?
19.アクシデントを含め、犠牲をゼロにすることはできないから、ビーガンになっても無駄では?
20.人工的環境下で飼育される動物も苛酷な自然で過ごすよりマシでは?
21.ビーガンも生活の制限を要求することで他者に苦痛をもたらしているのでは?
22.ベジタリアニズム(菜食主義)とはどう違うの?
23.動物愛護とは違うの?



1.でも植物も...


┗動物が本当に苦しむかわからないのでは?

┗わからないだけで植物にも知覚があるかもしれないのでは?

┗植物にも意識があるという記事(の見出しだけ)を読んだけど?

┗意識の定義によるのでは?

┗苦痛が問題なら、苦痛なく殺せばよいということになるのでは?

これらの問いに対する回答は>>コチラ<<


2.でもライオンも...


この問いに対する回答は>>コチラ<<


3.菜食は健康に悪いのでは?


┗菜食で命を落とした子供がいると聞いたけど?

┗ビタミンB12は?/サプリメントが必要な食事は不完全ではないか

┗タンパク質は?


これらの問いに対する回答は>>コチラ<<


4. 価値観を押し付けないでくれないか?/個人で勝手にやってくれないか?


・押しつけとは、相手の意思を無視して何かを力づくで受け入れさせたり、行わせたりすることであって、ある道徳的見解を表明し、事実を示すことで相手を説得しようとする行為は押しつけとは異なる。

むしろ、商業的な利益のために、他者を強制的に出生させ、自由を奪い、苦痛を与え、殺害する畜産や、味覚の欲求のために動物性食品を消費し、それを支持することこそ、押しつけとして糾弾されるべき行為である。

 ・Vegan Sidekickの回答を参照




5.食べるものに困ってる人のことを考えたら?


回答は>>コチラ<<


6.全員がビーガンになったら持続不能では?


回答は>>コチラ<<


7.動物を食べるのは自然なこと/昔から食べてきたからいいのでは?


「自然」という言葉が何を意味するのかをまず明確にしないといけない。自然であるということが、野生の動物の間で一般的に行われていることだというのなら、レイプや同種の殺害も承認されることになる。「昔から行われてきたから…」という理由による正当化の試みも同様の結論に行き着く(『でもライオンも…』への回答も参照)。

いずれにしても、自然であることは必ずしも正しいことを意味しない。 自然であることを、正しいこととすり替えることは、自然主義的誤謬と呼ばれる。

『哲学・論理学用語辞典』では

<非倫理的な前提から、倫理的結論を引き出してくる手続き>。何をなすべきかという倫理的な問題を、その問題の生じた条件についての議論にすり替えたうえで、たとえば世界史の発展法則とか生物化学の理論から善悪の論証を導き出してくるもの。

と定義してある。これは、本来G.E. Mooreが著書『Principia Ethica』で導入した際の、善は他の概念によっては定義できないため、そのような試みは誤りであるという意味とは異なっているが、現代においては上に引用した定義のような意味で用いられることが多い。

The Richmond Journal of Philosophy』では、現代における典型的な例として以下の3つが挙げられている:

  • 進化:適者生存が善であるため、生存競争を生き延びてきた制度や形質は正しいものである。
  • 同性愛:同性愛は不自然であるため、間違っている。
  • 肉食:肉を食べることは自然なことであるため、正しいことである。

これらはみな、倫理的に正しいということを、自然であるということにすり替えた詭弁である。

・ちなみに、「ホモ・サピエンスは雑食動物であるから、植物性のものしか摂取しないのは不自然だ」という主張もしばしば見られるが、雑食動物であるということは、動物性のものも植物性のものも両方摂取できるという意味であり、雑食動物のホモ・サピエンスが植物性のものしか食べないことも、この文脈の意味において全く自然なことである。


┗人間も自然の一部だから、その行いをやめさせようとするのは間違いでは?

・その観点から言えば、それをやめさせようとする行為も自然だ。もともと自然という言葉で物事の階層を曖昧にしておきながら、自分に不都合な行為だけスパッと線を引いて区別することは出来ない。


関連:ヒト以外の動物は道徳や権利なんて認識しないから自己満足では?

┗肉食によって人類の脳の発達が促進されたのだから、肉を食べるべきなのでは?

単純に前提と結論が結びついていない。現在のヒトゲノムを形成してきた進化の歴史上で、肉食によって人類の脳の発達が促進された時期があったということが事実であったとしても、「よって、現在その進化の産物であるヒトの個体は、肉を食べなければならない」という論理が成り立つと本気で信じているなら、基本的な論理を学びなおしてきた方がいい(あるいは生物の進化についても大きく誤解してるかもしれない)。もし栄養素の話がしたいのならQ.3の回答を参照。


8.ヒトラーも菜食主義者だったらしいけど?



・そもそもの話、ヒトラーが菜食主義者であったことは史実ではない。

・次に、ヒトラーが菜食主義者であったところでビーガニズムの正当性とは何のかかわりもない。ビーガニズムとは反差別運動であり、ユダヤ人差別の象徴ともなっているヒトラーが仮に菜食主義者であったところで、定義からして彼はビーガニズムの精神とは相容れない(単純に、たとえ肉を食べなくとも他の動物製品を消費していた時点でビーガニズムに関する議論としては論点を外していることも指摘しておく)。

つまり、「ヒトラーも菜食主義者だった」という主張が、ビーガン→菜食主義者という誤解から、菜食主義者は危険だという主張につながるという意図に基づくものだとするなら、ヒトラーのような振る舞いをした時点で定義からしてビーガンではないため、例え最初の誤解には目をつむったとしても、ビーガンへの批判として完全に的を外している。

・ちなみに、ホロコーストの犠牲者数は諸説あり、ばらつきがあるが、多くても600万人ほどと見積られている。一方屠殺場では今でも5秒ごとに1万5千の動物が殺されており、ヒトの食事のために、屠殺場で行われるだけで、毎年1500億匹が殺害されている。

・  Vegan Sidekickの回答を参照

・ちなみに、ゴドウィンの法則と呼ばれる次のような法則がある: 「オンラインでの議論が長引くほど、誰かがヒトラーやナチスを持ち出す確率が1に近づく」

9.作物の栽培でも動物が犠牲になるのでは?



・ビーガニズムの定義は "食品や衣服、その他いかなる目的のためであっても、動物に対するあらゆる搾取と残酷行為を、可能で実践できる限り排除する生き方" である。 

もしビーガニズムが広まることで、現在畜産動物とされている動物の犠牲が減る一方で、虫や野ネズミなどの犠牲が増えるというのであれば、この指摘ももっともなものかも知れない。 

しかし、作物の栽培にも犠牲は出るかもしれないとしても、当然肉とされる動物も作物を食べ育てられるのであり、1kgの肉を生産するのに7kgから10kgほどの穀物が必要とされると言われている。また、家畜の育成のために広大な土地が開拓され、より多くの動物たちの生息地が破壊されている。 

それらを考慮すれば、我々が生存する上で、犠牲を最小にする選択としてビーガニズムが最も理にかなっていることに疑いはなく、ビーガニズムという選択にいかなる矛盾もない。 

しかし、野生動物の苦しみを生じさせること自体は無視すべき問題ではなく、我々は、ビーガンになった上で、より犠牲が少ない効率的な食糧生産の方法を積極的に推進していくべきである。 

参考:

http://www.unccd.int/en/programmes/Thematic-Priorities/Food-Sec/Pages/Wors-Fact.aspxhttp://ww-wwds.worldbank.org/servlet/WDSContentServer/WDSP/IB/2004/02/02/000090341_20040202130625/Rendered/PDF/277150PAPER0wbwp0no1022.pdf
http://www.savetheamazon.org/rainforeststats.htm

 関連: 『19.アクシデントを含め、犠牲をゼロにすることはできないから、ビーガンになっても無駄では?』

10.ビーガンが増えたら畜産関係者が職を失うのでは?



・かつて欧米を中心として、奴隷商売が当たり前に行われており、奴隷を売買して生活している人が多くいた(今でも一部の地域で存在している)。だからと言って、奴隷制度に反対し、彼らの職を奪った人たちのしたことをあなたは間違っていたと考えるのだろうか?あるいは、あなたは買い物に行くたびに、経営難にある企業のリストでも持って出かけるとでもいうのだろうか? 近年、喫煙の害が認識されるにつれ、喫煙者の数は減少しており、もしかしたら近い将来、喫煙文化自体が完全に消滅するかもしれない。あなたはそれに伴うタバコ産業の消滅を危惧して、多くの人がタバコを吸い続けなければならないと主張するだろうか? もしそうでないというなら、畜産に限ってそのような論理を持ち出すのは誠実な態度とは言えない。

普段生産者のことなど何も考えず好きなものを好きなように買い物しておきながら、都合の良い時だけ特定の産業の従事者を守るようなポーズを取るのは「偽善」である。
偽善:本心からでなく、うわべをつくろってする善行。

動画:リチャード・ドーキンス 文明人で奴隷制を容認する者はいない。ではなぜ動物への残酷行為は受け入れるのか?(日本語字幕付き)

┗ビーガンは畜産関係者を差別してるのでは?



・ビーガニズムの定義 「食品や衣服、その他いかなる目的のためであっても、動物に対するあらゆる搾取と残酷行為を、可能で実践できる限り排除する生き方」 に、ヒトでない動物に対象を制限するということは含まれていない。ゲイリー・フランシオン(Gary L. Francione)の提唱する廃止論的ビーガニズムは、この点をアプローチにおける原理の一つとして明示している: 

「廃止論者は、種差別と同様に、人種差別、性差別、異性愛主義、年齢差別、障害者差別、階級差別を含む、あらゆる形態のヒトに対する差別を拒絶する」。

すなわち、もし仮にビーガンを自称するものが上記の差別に該当するような言動をしていたら、その人は実際にはビーガニズムの思想を共有している人ではないとみなしていいだろう。 

ビーガニズムには、最近より多くの注意を向けられるようになってきた畜産業従事者の問題も元々含まれている。日本での部落差別と畜産業の関係は良く知られているが、海外でも畜産業従事者の多くが貧困者や移民など社会的抑圧を受けやすいものであったり、畜産によって生じる糞尿処理施設が貧困層の居住地区の近くに偏って設置されていたりするなど、畜産問題は直接人間間の不正義にも関連している。そしてそれを押し付けてきたのはビーガンではなく、動物製品を消費するものたちであることは理解しないといけない。そのため、ビーガニズムは人間の解放でもあるという見方を強調するものもいる。

また、イスラエルがビーガン先進国となっている理由はホロコーストの歴史があるからだと言われてる。被差別者であったユダヤ人たちの多くは、自分たちが差別する側に周りホロコーストを繰り返すことを拒んでる。もしあなたが差別や抑圧の経験者であるなら、彼らを見習い、被害者は自分だけであるという意識は捨て、自分も加害者にならないよう努めるべきだろう。

"他者を害することは間違いなのです。そして一貫性の問題として、その他者が誰であるかということに制限はないのです。もし彼らが痛みと喜びの違いを認識できるのなら、彼らには害されない基本的な権利があるのです。...あなたが力こそ正義であるというファシズムを信じない限り、私たちが他者を害する権利はないのです。"―ヘンリー・スピラ、アニマルライツ活動家、ホロコースト生存者

"アイザック・バシェヴィス・シンガーが記した言葉「動物たちに対する扱いに関しては、全ての人間はナチスである」は正しいと思います。人類は、自分たちが被害者である場合はその抑圧を鮮やかに認識できます。一方で、彼らは盲目的で無配慮に他者を犠牲にするのです。"―Hacker、ホロコースト生存者、Animal Liberation Frontメンバー

  "私は、自分の家族全員が約35万人の他のポーランド系ユダヤ人と共に殺害されたワルシャワ・ゲットーで幼少時代を過ごしました。その経験が、私が動物たちのために取り組んでいることと何か関係があるのかと聞かれることがあります。それが私の動物たちのための取り組みに与えた影響は些細なものではありません。それこそ、私の動物のための取り組みの全てなのです"―アレックス・ハーシャフト、ホロコースト生存者、Farm Animal Rights Movement(畜産動物の権利運動)創始者




11.個人の自由では?



・被害者となる第三者がいる以上、個人の自由として許容されるものではない。そもそもビーガニズムとは、知覚あるすべてのものを、道徳的に配慮すべき対象として含めるべきという主張であって、彼らを第三者として考慮する必要がないと示さない限り、この個人の自由という主張では何も正当化されない。 

「ヒト以外の動物は道徳的に配慮する必要はない」という主張に関しては、『12.ヒト以外の動物は道徳的に配慮する必要はないのでは?』を参照

参考: 21.ビーガンも生活の制限を要求することで他者に苦痛をもたらしているのでは?

12.ヒト以外の動物は道徳的に配慮する必要はないのでは?/種が違うのだから当然では?



・種の違いを理由に、それを享受することができるものの利害を不当に軽視することは、人種の違いを理由に他者の利害を軽視する人種差別や、性の違いを理由に他者の利害を軽視する性差別などと同様の構造を持つ差別であり、種差別と呼ばれる。 

もし、動物の知性や社会性などを理由にそれを正当化するつもりなら、ヒトの中にも何らかの障害を原因として、他の種に属する個体よりも知能や社会性の面で劣る個体も存在するため、それらの搾取も容認されることになる。ここで、彼らもホモ・サピエンスという種の一員であるからという理由で彼らを擁護することは循環論法となる。 

より詳しくはこちらの議論、Vegan Encyclopedia - しゅさべつしゅぎ【種差別主義】を参照
"ヒトの胚が痛みや恐怖を感じる能力は、成体のウシやブタと比べて乏しいものだというのは全く明白なことだ。しかし、ウシやブタはヒトでないというだけの理由で除外されていまい、ヒトの胚はヒトであるというだけで神聖視される。これは、明らかに深く非進化論的である。"
"(ヒトがヒトであるというだけで特別な権利が与えられるという)絶対主義的な道徳的差別は、進化という事実によって根本的に根拠を突き崩される。"―Richard Dwakins『神は妄想である』

┗ヒト以外の動物に権利を与えるという発想には無理があるのでは?



▶まず、これを道徳的権利ではなく、法的権利についての議論として捉えても、単純に事実として間違っている。すでにヒト以外の動物に人権同様の権利が付与されている判例は複数存在している。そしてこれらの判例は、道徳的権利を根拠にしたものである。

参考:

  • http://sciencetime.seesaa.net/article/440614569.html
  • http://sciencetime.seesaa.net/article/443715919.html
  • http://sciencetime.seesaa.net/article/440605204.html
"ヒトと法律上の人は、これまでも、そして現在でも同義語ではない。… 例えば、生き物でないものでさえ法律上の人として認められている。米国では企業が法人であることはみな知っている。独立以前のインドではヒンドゥーの像やモスクを法人とする判決がされた。2000年にはインドの最高裁がシーク教の聖典を法人とした。そして2012年、ニュージーランドの先住民と国の間で、ある川を法律上の人と認める合意がなされている"―スティーブン・M・ワイズ(法学者)


┗ヒト以外の動物は道徳や権利なんて認識しないから自己満足では?



・彼らは道徳や権利という概念は理解しないかもしれないが、苦痛を感じる能力を持ち、利害関心を持っている。それは、ヒトの幼児や知的障害者とも同じである。すなわち、利害関心を持つ対象者自身が配慮されているという認識を持たないからと言って、配慮しなくてよいということにはならない。 

道徳的な選択として正当な意味をもたず、自己満足に過ぎないという批判が当てはまるのは、知覚も主観的意識も持たない植物に対して動物と同等の配慮をすることや、被害者には何の影響も及ぼさないにもかかわらず、感謝という言葉で動物の搾取を正当化できるというような考えだろう。 

また、権利はヒトが作ったものであるから、という主張もみられるが、正確に言えば、権利は哺乳類霊長目ヒト科ホモサピエンスという動物の一部の個体が生み出し、一部の個体たちが共有する概念に過ぎない。よって「ヒトが作った」ということだけを理由に、それを「動物」や「哺乳類」ではなく、「ホモサピエンス」のみに適用することは明らかに恣意的である(そして一つ上で示したように、すでにヒトでない動物にも権利は与えられている)。


13.ビーガニズムは宗教じゃないの?



この質問への回答は>>コチラ<<

14.感謝して食べているからいいのでは?



・感謝してレイプすれば、被害者の苦しみが軽減されたり、道徳的責任が回避されると考えるだろうか?感謝や供養などのパフォーマンスを加害者側がいくらしようが、被害者の苦しみには何の影響も及ばされない。


"この問題を動物の立場からみてほしい。被害者の視点で考えてほしい。自分が被害者ではないとき、自分の視点だけでは判断しないでほしい。なぜなら、自分が被害者でないときには、残虐性を合理化し、言い逃れをすることは簡単だからだ"―ゲイリー・ヨーロフスキー




15.犠牲を出したくないなら山にこもってればいいんじゃないか



・動物解放運動は、自分が残酷な行為に関与したくないというだけの話ではなく、人の手によって苦しめられている動物たちを救おうという運動である。そのためには、社会の中から働きかけシステムを変革する必要がある。

┗ビーガンだって動物産業によって成り立つ社会に生かされてるのだから、矛盾しているのでは?


・奴隷が一般的だった時代に、奴隷解放を訴えて立ち上がったものに対し「あなたも奴隷によって成り立つ社会に生きているのだから、その中で奴隷解放を訴えるのは矛盾している」と非難することは正当だと思うだろうか?あるいは、男性中心的な社会の問題を指摘し、女性の地位向上を訴える女性に対し、「これまで男性中心のシステムで構築されてきた社会で生きながら、そのような訴えをするのは矛盾している」というだろうか?システムの中から見たシステムの問題を認識し指摘できるのは、システムの中のものしかありえない。全く当たり前のことである。

16.ビーガンって草ばっか食べてるんでしょ?



・それは単純に間違いだ。ビーガンがどんなもの食べてるかは、例えば以下のサイトを見てみると良い:
All About Vegan
ヴィーガンジャンク! Facebook
VEGAN SHOP FREE

┗わざわざ肉や乳製品の代替品を食べるってことは、本当はやっぱ動物製品が食べたいんだろ?


▶そういうものもいるし、そうでないものもいる。いずれにしてもそれは何も問題ではない。ビーガンになっても肉や乳製品が食べたい気持ちが消えない人もいるだろう。多くのものは生まれたときから長い間その味に慣れている。しかし、その人は味覚の欲求は他者への危害を正当化しないと理解してビーガンになったのであり、味覚の嗜好はその選択の正当性をなんら無効にするものではない。

また、動物製品の代替が開発され、ビーガンが積極的にそれらを宣伝している理由は、まさにその味覚の嗜好を理由にビーガンになることをためらっている人たちにアピールするためである。必ずしも本人自身が肉や乳製品などの代替という位置づけで消費しているわけではない。

ただ、単純に美味しい食べ物の一つではある。中にはもともと肉や乳製品の動物臭さが苦手で菜食主義者になったという人も、大豆ミートや植物性ミルクは好きだという人もいる。ぜひお試しを。

ノンビーガン:ビーガンって草みたいな食べ物ばっか食べてるんでしょ?食の楽しみが減るのは耐えられないからビーガンにはなりたくないね。
ビーガン:(代替製品を紹介する)
ノンビーガン:なんでわざわざそんなもの宣伝してるの?本当は動物製品が食べたいんだ。ビーガンって意志が弱いんだね。
ビーガン:uhhh....(白目)

┗ビーガンは母乳も反対なんでしょ?


▶これは「ビーガニズム=完全菜食主義」という完全なる誤解に基づいたものだろう。ビーガニズムの一般的な定義は「食品や衣服、その他いかなる目的のためであっても、動物に対するあらゆる搾取と残酷行為を、可能で実践できる限り排除する生き方」であって、必ずしも菜食主義者であることを要求しない。母乳は通常、乳製品のように女性を脅したり傷つけたりして得るものではなく、女性が乳児に自発的に与えるものであるため、この定義に反することは何もない。

現在では、動物に害をもたらさずに得ることの出来る動物性食品というのはほとんどないため、必然的に菜食主義になることが基本ではあるが、培養肉などが普及すれば、肉を食べながらビーガンでいるなどのことも当たり前に可能になる。


17.我々が食べなければ、そもそも家畜は存在/存続することができないのでは?


┗家畜の絶滅は生物多様性の保護の

┗家畜の種の保存の本能を無視するのか?

これらの問いに対する回答は>>コチラ<<から


18.売られている肉はすでに殺された動物だから、食べても食べなくても同じでは?


▶もちろん、ビーガンは目の前にある肉を食べないことで、遡ってその動物を救えると考えているわけではない。動物製品の消費をボイコットして、それを広めることによって、今後の動物の犠牲を減らし、動物の利用を根絶することを目指しているだけである。もしビーガンがすでに処理されたものだからと言って購入して食べていたら、消費の減少に繋がることはない。また、他人に振舞われたときもなるべく避けるべきであるという理由は、ビーガンも出せば結局食べるという認識をされたら、周囲の意識を変えることにもつながりづらくなるためである。


19.アクシデントを含め、犠牲をゼロにすることはできないから、ビーガンになっても無駄では?


▶あなたは、交通事故をゼロにはできないから、何人轢き殺しても同じだと考えるだろうか?毎年560億以上の畜産動物が人間による消費のために殺されている(すなわちそれ以上の数が生み出され、悲惨な一生を送っている)。海洋動物を加えれば、その桁は一桁も二桁も上がる。すなわち食事による消費だけに限っても、究極的にはこれだけの犠牲を減らすことができる。

ある製品を動物の犠牲を介して生産されているものと知らずに消費してしまうこともあるが、それはビーガニズムを退ける理由にはならない。むしろそういった可能性を減らし、よりビーガンというライフスタイルを簡単にするためにも、可能な限りそのような製品を避けて生活するよう心掛けるのが大切であり、それ自体がビーガニズムの目的でもある。

よって、可能な限りの努力をしながらも完璧に動物製品を避けられていないという理由で、ビーガンを矛盾していると批判することは出来ないし、あなたが確実に避けえる動物製品を意図的に消費したり、ビーガンにならないで済む理由にもならない。

改めで強調すると、犠牲をゼロに出来ないからと言って、意図的にどれだけの数を、どれだけ苦痛を生じさせる方法で殺しても同じということには決してならない。


"みんな完璧じゃない.だがそんなことは最低限ビーガンになってから言ってくれ"―Mistro - The Holocaust



20.人工的環境下で飼育される動物も苛酷な自然で過ごすよりマシでは?



・まず、畜産動物がどのような環境下で飼育されているかを直視してほしい。



その後で言えることは、選択肢は「彼らを人工的な環境下で飼育するか」それとも「彼らを自然界で生かすか」ではない。正しくは「彼らを人工的な環境下で飼育するか」それとも「そもそも彼らに存在を与えないか」である。 

彼らの種が絶滅に至ることを危惧するなら『家畜の絶滅は生物多様性の保護の理念に反するのでは?』を参照

21.ビーガンも生活の制限を要求することで他者に苦痛をもたらしているのでは?



・まず、ビーガンはノンビーガンが(家畜などに対して)行っているように、他者から強制的に自由を奪っているわけではないことは改めて確認しておこう。(必要であれば『4.価値観を押し付けないでくれないか?』参照) 

あなたが必ずしも必要でない余剰の快楽を得る自由は、不要な危害を受けない自由より優先されない。つまり、レイプ犯の快楽のために、レイプ被害者の基本的な自由を無視してよいということにはならない。

  "あなたに拳を振り回す権利があるのは、誰かの鼻先の直前までだ。"―出典不明

参考: 11.個人の自由では?

22.ベジタリアニズム(菜食主義)とはどう違うの?



・菜食主義は、動機を問わず動物性のものを、(場合によっては部分的に)食事から排除する生活スタイルを指す。一方、ビーガニズムは種差別への反対として、食事のみでなく、あらゆる形での動物の利用をボイコットする社会正義運動である。今後、動物の利用を介さない培養肉などが普及すれば、ビーガニズムと菜食主義の違いはより明確になるかもしれない。(ただし、培養肉が完全にanimal-freeになるのはまだ先のことと考えられる。その具体的な理由については『培養肉を巡る倫理的問題とその改善可能性』参照)

23.動物愛護とは違うの?


回答は>>コチラ<<

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