植物にも意識があるという神話:11. 植物は情感(感情)意識を有する/12. 植物は内部表象に基づく、イメージベース意識を有する

植物にも意識があるという神話:11. 植物は情感(感情)意識を有する/12. 植物は内部表象に基づく、イメージベース意識を有する

■はじめに

これは、植物にも意識があるという神話への反証を与える論文『Debunking a myth: plant consciousness(植物の意識という神話への反証)』の内容を要約したものの一部である。

論文では、植物の意識を支持する側が持ち出す12の主張がリストアップされ、その1つ1つに対し、なぜそれが間違いであるのかが示されるが、本ページは、その中の11番目と12番目の主張『植物は情感(感情)意識を有する/植物は内部表象に基づく、イメージベース意識を有する』に対する反論部分の要約を扱う。

引用文中の参考文献については、元論文のReferencesをあたってほしい。 論文自体の概要や、他の主張に関しては『植物の意識という神話への反証』を参照。

■神経科学的自然主義

これまで植物の意識を支持するものとして提示される10の主張を検討し、そのどれ1つとして、有効なものではないことを見てきた。 では反対に、ある対象が意識を持つと判断するための合理的な基準にはどんなものがあるだろうか?

著者らがその基準を提供するものとして支持するのは、FeinbergとMallatが提唱する神経科学的自然主義と呼ばれる仮説である。 神経科学的自然主義は、哲学、神経科学、進化生物学の知見を統合し、意識の起源と機構を特定しようとするアプローチである。 以下、このアプローチに基づく2つの具体的な基準について考える。神経科学的自然主義についての詳細な議論は、FeinbergとMallatの著書『意識の進化的起源:カンブリア爆発で心は生まれた』を参照。

●仮定1:情感(感情)意識

彼らは、意識の1つの形態である、情感意識、すなわちポジティブな感情やネガティブな感情の主観的経験の存在を推定する基準を次のように定める

我々は、報酬や罰に誘導される学習はヒトのポジティブな感情やネガティブな感情を伴うため、感情は経験によるオペラント学習の能力によって明らかにできると考えた。 しかし、単純なオペラント学習は意識的にも可能であるとわかっているため、我々が選んだ基準は、高度(high-capacity)オペラント学習、すなわち、身体全体を使って全く新しい行動を学習することとした(Feinberg and Mallatt 2016a: pp.152-154)。 例えば、ラットが感情的関心を顕わにするのは、レバーのところまで歩いていき、レバーを押すと餌の報酬が得られることを学習したときである。 我々がこの仮定を採用したのは、それが情動の二重の証拠になっているためである。 すなわち、情動の存在は(1)報酬への初めの誘因、および(2)学習した報酬を思い出し行動を動機づけることの両方によって示唆されるためである。

この基準に当てはまる情感意識を持つ生物は、脊椎動物(全て)、節足動物(全て)、頭足類(タコ、イカ、コウイカ)のみである。 我々が同意するBronfmanら(2016)とGinsburgおよびJablonka(2019, 2021)の同様の理論も参照のこと。


●仮定2:イメージベース意識

例えば哺乳類の大脳では、体表面の位置関係を保持する形で対応する神経細胞が配置されている。 こうした空間配置を保存する神経的対応を、同型的地図という。 これに関して、FeinbergとMallatは次のように仮説を立てる:

視覚、嗅覚、触覚、聴覚などの複数の感覚から、周囲の環境や自分の体の地図を明確に符号化する生物は、これらの地図化されたシミュレーションを意識的に経験すると仮定した(Feinberg and Mallatt 2013, 2016a)。 脳や体がそのような詳細な地図を組み立てるためにエネルギーを費やすならば、例えば世界内で移動したり活動したりするための心的参照イメージとして、それを利用すると仮定するのは合理的と思われる。

●意識の進化

高度なオペラント学習を示すことと、同型地図を有することという上の2つの基準は互いに独立なものであるが、結果的にそれらの基準を満たす生物の集合は一致する。 これらの基準を満たす生物の集合はまた、機敏な移動性を持つ生物の集合とも一致する。 したがって上述の基準は、意識の進化的利点は、外的環境に関するダイナミックな情報を瞬時に処理する機能にあるという進化生物学的考察とも整合し、互いに補強し合う。


■11. 植物は情感(感情)意識を有する

さて、11番目の主張は 上の仮説1に関連するもので、植物の古典的連合学習を根拠に植物の情感意識の存在を示唆するものであるが、すでに主張8で述べたように、古典的学習は意識を必要としないため、有効な主張とはならない。


■12. 植物は内部表象に基づく、イメージベース意識を有する

12番目の主張は、上の仮説2に関連し、バクテリア内で環境が地図化されており、植物もおそらくそうであろう、というものであるが、どちらに対しても一切の証拠が示されておらず、これも有効性のある主張とはならない。

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