植物にも意識があるという神話:1. 細胞1つ1つに意識がある

植物にも意識があるという神話:1. 細胞1つ1つに意識がある

■はじめに

これは、植物にも意識があるという神話への反証を与える論文『Debunking a myth: plant consciousness(植物の意識という神話への反証)』の内容を要約したものの一部である。

論文では、植物の意識を支持する側が持ち出す12の主張がリストアップされ、その1つ1つに対し、なぜそれが間違いであるのかが示されるが、本ページは、その中の1つ目の主張『細胞1つ1つに意識がある』に対する反論部分の要約を扱う。

引用文中の参考文献については、元論文のReferencesをあたってほしい。 論文自体の概要や、他の主張に関しては『植物の意識という神話への反証』を参照。

■主張1:細胞1つ1つに意識がある

この種の主張は、CBC(Cellular Basis of Consciousness;細胞基盤意識)という理論に依拠しているが、著者らはこの理論の問題を列挙する。

  • まず、CBCの支持者は、細胞が感覚受容器分子(およびそれに対する反応)を有するということと、意識的な感覚受容を持つことを同一視していることに加え、あらかじめ組み込まれた振る舞い以外はすべて意識的な振る舞いだとみなしているようだが、彼らは、いかなる意識を必要とせずとも、状況に応じて様々な複雑な振る舞いを生み出す可塑性を持つという細胞の生理を無視している。
  • 植物に唯一可能な学習の形態は、非連合学習と呼ばれるものであり、行動科学者によれば、この種の学習に意識は必要とされない。

ここでいう「学習(learning)」とはいうまでもなく心理学用語としての学習であり、経験の結果としての行動の変化のことを指す。 学習は連合学習(associative learning)非連合学習(non-associative learning)に分けられ、連合学習はPavlovの犬に代表されるように、複数の刺激を関連付ける(associateする)学習であるのに対し、非連合学習は単一の刺激に関する学習で、同じ刺激が繰り返されることで、慣化(habituation)鋭敏化(sensitization)を示すプロセスを言う。 学習に関係する議論は8つ目の主張も参照のこと。

CBCへの批判はまだ続く。

  • 意識が個々の細胞のレベルで機能するのなら、どのようにして何兆もの細胞が個々に持つ意識が、多細胞生物の脳を基盤とする単一の意識に統合されるのか、という難解な問題が生じる。
  • そして、神経細胞の損傷は意識の消失につながる一方で、体細胞の損傷では意識への直接的な影響はないという明確な実証的事実が、これらの主張の反証となる。

もう1つ細胞の意識の根拠として持ち出されるものは、アメーバや癌細胞にも見られる、予測を伴って目標に向かって進むような振る舞いを見せるということであるが、これも、走化性と呼ばれる性質(周囲の化学物質の濃度勾配に応じて方向性を持った動きする性質)によって完全に説明される。

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