植物にも意識があるという神話:5. 植物は、ニューロンを持つ動物と同様に、電気信号を使って意識に必要な情報統合を行う

植物にも意識があるという神話:5. 植物は、ニューロンを持つ動物と同様に、電気信号を使って意識に必要な情報統合を行う

■はじめに

これは、植物にも意識があるという神話への反証を与える論文『Debunking a myth: plant consciousness(植物の意識という神話への反証)』の内容を要約したものの一部である。

論文では、植物の意識を支持する側が持ち出す12の主張がリストアップされ、その1つ1つに対し、なぜそれが間違いであるのかが示されるが、本ページは、その中の5つ目の主張『植物は、ニューロンを持つ動物と同様に、電気信号を使って意識に必要な情報統合を行う』に対する反論部分の要約を扱う。

引用文中の参考文献については、元論文のReferencesをあたってほしい。 また、植物の構造に関しては、4番目の主張に関する項『活動電位などのコミュニケーションのための電気信号は、ニューロンのように師要素に沿って伝播する』内を、論文自体の概要や、他の主張に関しては『植物の意識という神話への反証』を参照。

■主張5:植物は、ニューロンを持つ動物と同様に、電気信号を使って意識に必要な情報統合を行う

この主張の主な問題は、意識のメカニズムに関して専門家の間に存在する2つの基本的な合意に矛盾することである。

著者らによれば、情報統合とは、本来の正式な定義では、あるシステムのうち、アウトプットが単なるインプットの足し合わせではない形で相互作用する部分のことであるが、植物の意識の支持者は、反応に関する決定のために、多様な情報を組み合わせて処理するという意味で用いることがあるため、ここでは情報統合をその意味で用いるとする。

動物の意識の研究者たちの間に存在する合意の1つが、意識の生成には、フォワードシグナルだけでなく、広範なフィードバック、すなわち相互的なコミュニケーションを含む情報統合が不可欠である、ということである。

このような統合された電気信号は、同じ心理作業を行わせながら測定することで、ヒトだけでなく、様々な哺乳類の脳内で用意に測定することができる。 これに関して

しかし、植物のいかなる部位においても、それが検知されたことはない。 すなわち、フォワードシグナルは報告されていても、フィードバックシグナルは一度も見つかっていないのである。

という指摘がまずなされる。

また、意識に必要な情報統合に関する別の合意は、ニューロン間の高度な相互接続性である。 これに関しては、次のような説明がなされる。

ヒトの脳の平均的なニューロンは、その多くの分岐過程とシナプスを通じて、約1万個の他のニューロンと接触している。 一方、植物の節間にあるの師部維管束は、主に枝分かれしていない直線的なものであり、糖転移も信号伝達もこの直線的な軸に沿って行われる。

ただし、隣接する維管束の間には吻合(ふんごう)部を持つ枝が生じ、リソースの横方向の移動のためのネットワークを形成することがある。 しかし、これらの吻合は、動物の血管ネットワークほど精巧ではなく、意識にも関与していない。 それでも、植物の意識の支持者は、動物の脳の神経細胞ネットワークと照らし合わせ、師部ネットワークが意識を生成する付加的な機能を持っていると主張する。 この議論の問題は次のように説明される:

この議論の難点は、若い節間には師部の吻合部が存在しないことである(Aloni and Barnett 1996)。 もし、師部の吻合部が植物の意識に必要とされるのであれば、成長中の植物の先端部や若い節間は、意識を持たないことになる。 これらは、成長中の植物の屈曲や転頭運動といった、植物の意識の外形的表れとしてしばしば引用される動きの調節に不可欠であるにもかかわらずである(Gagliano et al.2016; Calvo 2017: p.219; Calvo and Trewavas 2020)。 また、若い発芽苗には師部の吻合部が存在しないが、苗も成熟した植物による振る舞いの多くを示す。 もし植物の意識の機能が植物に重要な「決定」をさせることであるとしたら、なぜ成熟した植物では意識が作用しているのに、ライフサイクルの中で最も脆弱な部分である若い苗では意識が作用しないのだろうか?

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