このブログの人気の投稿
アンチナタリズム入門 ~わかりやすいアンチナタリズムの解説~アンチナタリズムとは何であり、何でないのか
アンチナタリズム入門 ~わかりやすいアンチナタリズムの解説~ アンチナタリズムとは何であり、何でないのか by Kei Singleton First published: 23 Oct. 2017; Last major update: 12 Sep. 2020 更新履歴[開く/閉じる] 2019年11月20日:文中に『 ベネターの厭人主義的アンチナタリズム 』への案内追加 2020年9月12日:文中に『 Review of Suffering vol.1:アンチナタリズム 』へのリンクを追加 2021年3月19日:レイアウト変更(目次追加他)、いくつかのマイナーな文章校正 2021年4月29日:pdf版へのリンク追加 はじめに アンチナタリズムという思想の認知度は着実に上がっており、関心を持つ人も増えていますが、同時に様々な混同や誤解も見られるようになって来ています。ここでは、アンチナタリズムとはどんな思想なのか、そしてどんな思想ではないのかを、出来るだけシンプルな形で解説します。pdf版(A5サイズ)を コチラ からダウンロードすることもできます。 Keywords: アンチナタリズム、反出生主義、エフィリズム、生殖の倫理、デイヴィッド・ベネター ―目次― アンチナタリズムとは何なのか~アンチナタリズムを支持する理由 生まれることで誰かに悪影響をもたらすから 生まれることでたくさんの苦しみを経験するから 子供を作ることは自分勝手なことだから アンチナタリズムとは何でないのか 子供嫌いや、子持ちいじめではない 「生みだすべきではない」であって「生まれたくなかった」ではない 「始める価値がない」であって「続ける価値がない」ではない その他混同されやすい考え おしまいに~より進んだ議論は I. アンチナタリズムとは何なのか~アンチナタリズムを支持する理由 アンチナタリズム(Anti-natalism)とは、子供を作ることを推進するnatalismに反対で、...
ビーガンFAQ - よくある質問と返答集
ライブラリ >Vegan FAQ ―Frequently Asked Questions― (よくある質問) by Kei Singleton First published: 10. Oct. 2017; Last updated: 4. Sep. 2024 ■お知らせ 2024年9月4日:予告の通り,2024年9月4日をもってウェブ版は廃止し,pdf版とページを統合した。 >> Download Ver 3.1 (2024年9月4日公開)<< 目次 第1章 導入 1.1 本書の内容について 第2章 ビーガニズムとは何であり,何でないのか 2.1 Q. ビーガニズムって何? 2.2 Q. ビーガニズムを突き詰めたら,人類は滅ぶしかないのでは? 2.3 Q. ビーガニズムは宗教じゃないの? 2.4 Q. ベジタリアニズム(菜食主義)とはどう違うの? 2.5 Q. 動物愛護とは違うの? 2.6 Q. ゆるビーガンとはなに? 2.7 サマリーと参考文献 第3章 プランツゾウ 3.1 Q. 植物にも命があるからビーガンは矛盾しているのでは? 3.2 Q. 命はすべて平等であるから,どの生物も道徳的価値は同じなのでは? 3.3 Q. 動物が本当に苦しむかわからないのでは? 3.4 Q. 植物も意識的知覚を持つのでは? 3.5 Q. 苦痛なく殺せばよいということ? 3.6 Mallat et al.(2021)の要約 3.7 サマリーと参考文献 第4章 ライオンゾウ 4.1 Q...
時間の矢の起源:典型性に基づく説明
時間の矢の起源:典型性に基づく説明 Kei Singleton First published: 17. Apr. 2019; Last major updated: 17. Apr. 2019 はじめに 生物進化の法則、人工生命の創造に伴う明らかなリスクへの効果的な対処、意識や知覚をもたらす脳の神経構造、老化のメカニズムなど、苦しみの原因にかかわるこれらの問題をより深く理解し、そして対処を可能にするには、熱力学や統計力学をはじめとした物理学の知識と手法が必要になる。 一方で、熱力学や統計力学で用いられる概念や方法の一部は、非常につかみどころのないものでもあり、それゆえに多くの誤解が広まってしまっている。 ここでは、それらの分野の概念を専門的な予備知識を必要としない形で紹介することを一つの目的とし、それ自体が苦しみの大きな原因である時間の不可逆性について議論する。 1 ミクロな世界とマクロな世界 1.1 熱力学第二法則と時間反転非対称 形あるものは時の流れと共に姿を変え、やがて朽ち果てる。 不可避な老いと死は私たち動物の多くにとってそれ自体が最も大きな苦痛であるだけでなく、将来経験する老いや死に対する不安や恐怖など、生における他の様々な苦しみを生む原因ともな る。 しかしこの時間変化の一方向性は、生物の変化にのみ見られるものではない。私たちの目に見える 系(考察の対象とするもの) の多くは、その変化の方向に明らかな非対称性を示す。例えば部屋でコーヒーにアーモンドミルクを入れて飲んでる場面を想像してみよう。 コーヒーに垂らしたミルクは自ずとコーヒーと一様に混ざり合うが、何か特殊な操作でも加えない限り、一度混ざり合ったミルクがコーヒーと分離することはない。 また、それが淹れたての熱いコーヒーであっても(あるいは十分冷えたアイスコーヒーであっても)、放置すればやがて部屋の空気と同じ熱さになり、それ以上変化を示さなくなる。 これらのマクロな(目に見えるスケールの)系の状態を扱うのが、 熱力学 と呼ばれる分野である。 ここではまず、その熱力学からいくつかの有用な概念を導入する。 マクロな系が、(外界とのやりとりがないまま)しばらく放置して至る、目に見えた変化を示さなくなる状態を 平衡状態 という。 そ...
それでも、生まれてこない方が良かった ― 批判への返答 by デイヴィッド・ベネター
元論文: Still Better Never to Have Been: A Reply to (More of) My Critics David Benatar Received: 2 July 2012 / Accepted: 8 July 2012 / Published online: 5 October 2012 はじめに これは、 デイヴィッド・ベネター が自身の著書『Better Never to Have Been(生まれてこない方が良かった―存在してしまうことの害悪)』(以下,BNtHB)に向けられた批判に対する反論を記した論文の要約と抜粋である。 和訳本には目を通していないため、異なる用語や表現を用いている個所が多々あると思うが、それについては自分で補ってほしい。 1. Introduction この導入では、当然多くの反対が来ることは予想していたが、中にはまったく内容を読んでいないことを堂々と認めたうえでの反論や、どこが問題なのかを示さない批判もあったことを述べている。 2. Why It Is Better Never to Have Been 2節目では、彼の議論の基盤であり、主に批判の対象となっている基本的な非対称性の議論と、それに続く4つの非対称性: (i)生殖の義務の非対称性 (ii)将来の利益の非対称性 (iii)回顧的な利益の非対称性 (iv)遠隔地の苦しみと幸福の不在の非対称性 そして人生のクオリティについての議論を改めて要約して示している。 これらについては『Better Never to Have Been』の2章および3章、あるいは当ブログ記事『 ベネタリアン的非対称性の評価の仕方 』を参照してもらいたい。 3. Impersonally Better or Better for a Person? ここでは、ベネターが「非存在者の苦痛の不在は良い」というとき、具体的にどういった見方からの判断なのかを説明している。 すなわち、非人格的に良いのか、それとも誰かにとって良いと言っているのか、ということである。 彼は、彼への批判の一部は、ここをはっきり理解してないとし、次のように述べている: 私がすでに明確であってほしか...
