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リチャード・ドーキンスとピーター・シンガーの対談

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YouTubeにアップしていた字幕付き動画が、著作権違反に該当したため、こちらに字幕を載せる 動画はドーキンス財団の公式チャンネルのもの 2008年に放送され、British Broadcasting AwardsでBest Documentary Seriesに選ばれた、動物学者リチャード・ドーキンス出演の英国のドキュメンタリーシリーズ『The Genius of Charles Darwin』よりピーター・シンガーとの対談 二人は対談でダーウィニズムが我々の倫理観に与えた影響を探る。肉食の問題だけでなく、中絶、カニバリズム、動物実験、チンパンジーとヒトのハイブリッドの作成、宗教など、様々な問題を取り上げている。 ―――――――――――― リチャード・ドーキンス:英国の進化生物学、動物行動学者、ポピュラーサイエンスライター。世界で最も有名な一般向けの科学解説者の一人であるが、その活動の一環として、宗教を始めとした、超自然的な信仰に対する批判も積極的に行っており、欧米を中心とする世俗主義ムーブメントを牽引する代表的人物となっている。『 利己的な遺伝子 』、『 神は妄想である 』など、多数のベストセラーを持つ。 ピーター・シンガー:オーストラリアの倫理学者。主要著作は『 動物の解放 』、『 実践の倫理 』など。世界で最も影響力を持つ人物の一人に数えられる。 00:01―ホモ・サピエンスの神聖視 D ピーター、あなたは世界で最も道徳的な人の一人に違いないでしょう。恐らくあなたは世界で最も論理的に一貫した道徳的立場を築いている人です。しかし、まさにその論理的一貫性ゆえに様々な方面から攻撃を受けているのではないかと思うのですが。 S 確かにその通りです。一方で私が最も批判を向けているのは社会の中のほとんどの人々の動物に対する態度です。我々は動物たちの利害を十分真剣に捉えていないと思うのです。そしてある意味では、ダーウィニズムの含意することの一つとしては、それらをより真剣に捉えるべきだということだと思うのです。あるいは少なくとも我々と動物たちとを隔てるバリアの一部を取り除くべきだということです。 しかしもう一方で私は、人はホモ・サピエンスという種の一員であるというだけで特別な存在であるとは思いません。例えば、ある人が生

培養肉を巡る倫理的問題とその改善可能性

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培養肉を巡る倫理的問題とその改善可能性: 我々は、新たな技術にどう向き合うべきなのか Kei Singleton Blog version. First written: 2 Sep. 2018; last update: 2 Sep 2018 Abstract 動物たちに多大な苦痛をもたらすことに加え、環境破壊や新興感染症発生の原因でもある破滅的なシステム――畜産に代わる新たな食糧供給手段として、培養肉(in-vitro meat)の生産可能性は注目を浴び、その開発が進められている。そして培養肉は、野生動物の管理や肉食動物の保護の際に与える食事としても期待されている。しかし、少なくとも現段階では、培養肉の製造はcruelty-freeではない。ここでは、そのような製造に伴う倫理的問題に加え、畜産の撤廃が人々の倫理観の底上げではなく培養肉などの代替製品の普及によって行われることで取り残される問題、そしてそれらの改善可能性及び培養肉の利用可能性について取り上げ、我々が取るべき態度について議論する。 Contents 1 Introduction 2 倫理的問題とその改善可能性 3 培養肉の本当の必要性 4 技術開発の問題と可能性およびそれらに対する向き合い方 5 Summary and Conclusion 1 Introduction  畜産は、気候変動の主張な要因であるだけでなく、土地利用、水利用、海洋酸性化、抗生物質の効かない耐性菌の発生、そして言うまでもなく、動物たちへの暴力と、それによってもたらされる途方もない苦痛の上に成り立っている。大量で安価な培養肉の実現は、それらの問題全てを解決、あるいは少なくとも大幅に改善する可能性を秘めている[1]。もちろん、これらの問題は、我々全員がビーガンになるという選択をすれば容易に解決されるものであり、培養肉の普及に伴って懸念される最初の問題として、他の解決手段を隠してしまうということが挙げられている[2]。あるいは、近い将来の培養肉の普及可能性が、現在畜産製品を購入し続ける口実に使われてしまうということも挙げることができる。また実際に培養肉などの代替製品の普及によって畜産業が撤廃されたとしても、人々の倫理観の底上げが起こっていない場合、種差別や暴力の根本